新井素子研究会 > 登場物リスト：書籍 > SF本の雑誌

SF本の雑誌

別冊本の雑誌15

書誌情報

【単行本】

• ［編者］本の雑誌編集部
• ［出版社］本の雑誌社
• ［発行日］2009/07/05
• ［ISBN］978-4-86011-097-0
• ［PAGE］175
• ［価格］1,500円 + 税（第3刷）
• ［装幀］岩郷重力 + WONDER WOUKZ。

『本の雑誌』が発行したSFガイド本。過去『本の雑誌』に掲載されたSF特集やSF関連記事を中心に、オールタイムベスト、対談、コラムなどの企画を収録。

内容

• 本の雑誌が選ぶSFオールタイムベスト100（選者：大森望・鏡明・風野春樹）
• 漫画：「SF大将特別編　万物理論」（とり・みき）
• 小説：「バナアン剥きには最適の日々」（円城塔）
• SFサブジャンル・こだわりベストテン
  • ポストホロコーストSF「痛い目に遭っても頑張る人類」（Arte）
  • 本格ミステリSF「絶句…あっと驚く奇想／謎解きが空前のカタルシス！」（スズキトモユ）
  • へんないきものが出てくるSF「これでもかこれでもか!?　不思議生命体の異彩きわまる！」（中村融）
  • 宇宙人の奇妙な流儀「宇宙はひろい。宇宙《人》もなんだってアリ!!」（u-ki）
  • 素敵な老人SF「老人力炸裂！　シルバー世代の活躍をご覧あれ！」（山岸真）
• 書店員POP推薦　私たちSFの味方です！
• 「本の雑誌」傑作選
  1. 特集■がんばれ、SF！
     • 座談会：「我々の望むSFはどこにあるか」（鏡明・高橋良平・横田順彌）
     • コラム：「サイバーパンク以後の海外SF」（大森望）
     • インタビュー：「SF雑誌の今後に未来はあるか　SFアドベンチャー編集部・関智氏に聞く」
  2. 特集■この10年のSFはみんなクズだ！
     • 座談会：鏡明vs高橋良平（司会・目黒考二）
     • コラム：大森望の意見
     • コラム：山岸真の意見
     • 高橋良平が選ぶこの10年で読むべきSF／鏡明が選ぶこの10年で読むべきSF
  3. 特集■われらSF者宣言！
     • 座談会：「SF者人生双六を作る！」（大森望・堺三保・三村美衣／双六製作・水玉螢之丞）
     • エッセイ：「早くSF者になりたい！」（『SFマガジン』編集長・塩澤快浩）
     • 漫画：「或るSF（アホー）の一生」（とり・みき）
• エッセイ：「日本SFアート史」（大橋博之）
• 本の雑誌はSFをどう伝えてきたか(1)：1976年創刊号〜1983年32号「天の川イワナ釣り編」
• 翻訳SF担当編集者座談会：「海外モノに大コケなし、バカ売れもまず（笑）なし！」（小浜徹也・清水直樹・樽本周馬）
• SF的ノンフィクションガイド「SFより絶対面白いSF周辺やわらか頭本」（椎名誠）
• SFセンター試験精選問題集　模擬問題＆回答・解説（T-con2009実行委員会）
• エッセイ：文庫にならなかったオススメ本（日本篇）「復刻が待たれる20世紀の名作たち」（日下三蔵）
• 〈書評漫才〉出前篇「君にはむかしから言ってるんだけど、とにかく初心者（オレ）にも理解できてすごぉく面白いSFを教えてくれよ！」（北上次郎・大森望）
• 本の雑誌はSFをどう伝えてきたか(2)：1986年50号〜2003年236号「箱ウニ滝登り編」
• 小説：特別掲載「アドバタイジング・バード」連載第一回・プロローグ（椎名誠）
• ベスト・オブ・ベスト”SFガイド”「SFは人生の道と見つけたり！　ガイドを越えた人生指南の書」（三村美衣）
• SF者用語辞典
• コラム：「SF偉人伝」（牧眞司）
  • 柴野拓美：SF愛好家の理想像、世界が認めたナンバーワン・ファン
  • 福島正実：現代の日本SFを大きく開花させた「泣く子も黙るオニ」
  • 小松左京：われらが親分、SF界の英傑、現代に生きるルネサンス人
  • 石原藤夫：まさしくSF研究の至宝、書誌にかける情熱と胆力
  • 野田昌宏：ぼくらにSFを楽しむことを教えてくれた優しい兄貴
  • 大宮信光：すべての知識はSFに通ずる、その逞しき「乱学」の信念
  • 水鏡子：マニアのアイドル、エラそうじゃないところがかえってスゴい
  • 小川隆：SF界で「ラヴ＆ピース」を体現、たくさんの後輩を育てる
  • 武田康廣：SFファンダムの名将軍、それとも愛すべきガキ大将
  • 安達一延：半世紀以上SFを応援しつづけた、ほんとうの味方

新井素子関係の内容

「本の雑誌が選ぶSFオールタイムベスト100」（P.2-11）

大森望（翻訳家／書評家）、鏡明（作家／批評家）、風野春樹（精神科医／書評家）の3人が選ぶSFオールタイムベストです。P.11、75位に新井素子さんの「グリーン・レクイエム」を入れています。

「号外！SF本の雑誌」（PDFファイル）を見ると、推薦したのは風野春樹のようです。風野は『S-Fマガジン』2006年4月号の「SFオールタイムベスト2006」でも日本短編部門でも「グリーン・レクイエム」をベスト5に挙げていました。

ちなみに1位はグレッグ・イーガンの『万物理論』でした。

座談会：「SF者人生双六を作る！」（P.72-79）

「本の雑誌」傑作選3「特集・われらSF者宣言！」より。初出は2003年6月号、出席者は大森望、堺三保、三村美衣。SF者の人生に起こりがちな出来事を双六で表現しようという企画で、水玉螢之丞の描いた双六が掲載されています。P.77に新井素子作品のタイトルが出てくきます。

大森　双六のコマ全部にＳＦのタイトルをつけるのもいいね。

三村　最初は『夏への扉』で、古本屋に行くコマは『奇妙な触合い』。ＳＦ大会は『おしまいの日』ね。もう後に戻れないから。

『おしまいの日』がSFか、と訝る向きもあるかと思いますが、SF作家が書いた小説なので無問題です。

定点観測10「いまどんな文庫SFが読まれているか」（P.111-114）

「本の雑誌はＳＦをどう伝えてきたか！(1)」内に掲載。初出は第27号（1982年9月）。西武ブックセンター池袋店の売上データを編集部が集計した文庫SFのベストランクを50位まで掲載、亀和田武が考察を加えています。新井素子さんについて本文で特に触れられているのでその部分を抜き出してみます。P.112-113より。

さらに特定の作家について言及すると、意外というか予想通りというか新井素子の大健闘がある。22位の『通りすがりのレイディ』は今年に入っての刊行とはいえ、１・15の発売であるから、セミ・ロングセラーといえないこともない。52位には『いつか猫になる日まで』も入っており、特定読者がついているという点では筒井康隆に次ぐ存在かもしれない。ＳＦ大会で選定される星雲賞の短編部門を、彼女は今年、２年連続受賞した。

ちなみにランキングのベスト10は以下の通り。

1. 『暗黒世界のオデッセイ』（筒井康隆／新潮文庫）
2. 『エクスプローラー船消滅！』ペリー・ローダン79（クラーク・ダールトン／ハヤカワ文庫SF）
3. 『幻魔大戦』(16)（平井和正／角川文庫）
4. 『アンドロイドは電気羊の夢を見るか？』（P・K・ディック／ハヤカワ文庫SF）
5. 『1000年女王（映画篇）』（藤川桂介・松本零士／集英社文庫コバルトシリーズ）
6. 『進化した猿たち』(3)（星新一／新潮文庫）
7. 『進化した猿たち』(2)（星新一／新潮文庫）
8. 『イリスの石』グイン・サーガ外伝2（栗本薫／ハヤカワ文庫JA）
9. 『剣の騎士』紅衣の公子コルム1（マイクル・ムアコック／ハヤカワ文庫SF）
10. 『エディプスの恋人』（筒井康隆／新潮文庫）

新井素子さんの小説は、20位に『星へ行く船』、22位に『通りすがりのレイディ』、36位に『あたしの中の……』（いずれも集英社文庫コバルトシリーズ）がランクインしています。

SFレビュー「大人のＳＦはどこへ行ったのだ」（P.114-115）

「本の雑誌はＳＦをどう伝えてきたか！(1)」内に掲載。初出は第32号（1983年9月）。最上勝平によるSFレビューの最終回。ジュブナイルSFを取り上げています。読んだのは、『妖魔よ翔べ』（清水義範／ソノラマ文庫）、『エイリアン秘宝街』（菊地秀行／ソノラマ文庫）、『シンデレラ迷宮』（氷室冴子／コバルト文庫）の3冊。文中に新井素子さんの名前が出て来きます。

氷室冴子『シンデレラ迷宮』も暗い話。普通の女の子が突然、童話の世界へまぎれこんでしまって、という新井素子流のフワフワ・ファンタジイを思わせる設定なのだが、結末がえらく皮肉で、パロディと言いたくなってしまった。どうパロディか、を説明するにはラストを明かさなければならないから、委細面談にしておく。題名のシンデレラは、シンデレラ・コンプレックスのシンデレラ――これでも説明のしすぎかもしれない。さすがに『クララ白書』の印税でマンションを購入したと噂されるだけの実力の持ち主である。

SF者用語辞典（作成・SFファン交流会／P.170-175）

SF関連用語を解説した辞典。新井素子さんの名前が出て来る項目が一つあります。P.171より。

●第一世代／第二世代／第三世代

デビュー時期による日本のＳＦ作家の分類法。第一世代は星新一、小松左京、筒井康隆ら昭和十年代以前の生まれで三十年代のデビュー、第二世代は梶尾真治、鏡明、山田正紀ら昭和二十年代前半生まれで四十年代後半のデビュー、第三世代は夢枕獏、神林長平、新井素子ら昭和二十年代後半〜三十年代前半生まれで五十年代前半のデビュー。これらの作家はデビュー方法に特徴があって、ＳＦ専門の新人賞に入選したか、ファンダムを経由してプロになったかのほぼどちらかである。現在ではＳＦ専門の新人賞だけでなく、他ジャンルの新人賞からもＳＦ的な傾向を持つ作家が輩出されるようになり、ジャンルの垣根を越えて参入も活発化した結果、新しい書き手の年齢や経歴も多様化している。このため、複数の作家をひとつの世代としてまとめる捉え方も変わりつつある。

第二世代と第三世代の生年とデビュー年を記してみます。

• 梶尾真治……1947年（昭和22年）生／1971年（昭和46年）デビュー
• 鏡明……1948年（昭和23年）生／1970年（昭和45年）デビュー
• 山田正紀……1950年（昭和25年）生／1974年（昭和49年）デビュー
• 夢枕獏……1951年（昭和26年）生／1977年（昭和52年）デビュー
• 神林長平……1953年（昭和28年）生／1979年（昭和54年）デビュー
• 新井素子……1960年（昭和35年）生／1977年（昭和52年）デビュー

ちなみに、映画『スターウォーズ』が日本で公開されたのが1978年（昭和53年）。日本にSFブームが起きました。この前後にデビューした作家から「第三世代」と呼ばれているような気がします。