第一回奇想天外SF新人賞の受賞作が「あたしの中へ……」となっているが、正しくは「あたしの中の……」。
また、「好きな作家は山田風太郎」と書いてある。
5本の短いエッセイが掲載されたこのページは、新井素子さんが立教大学2年の時のお仕事です。
ちなみに、この中の「いちょう」というエッセイを参考にして「11月の公式参拝」では立教大学内の散策を行いました。
この間。クラスメートと二人で、キャンパスの中を歩いていた。夕暮れ時。れんが造りのチャペルの角をまがる。と。突然視界の中にとびこんでくる黄色。大きないちょうの木の葉が、いつの間にか、全部落ち着いた黄色に染まっていた。いちょうの葉のフィルターごしに、甘ったるい金色の光の洪水。隣に深い緑色の針葉樹の大木があるものだから、どうしようもなく鮮やか。「うわ……すごい」思わず呟く。こんなに目立つ位置にあるのに、もうこの学校に二年もいるのに。「毎日ここ通ってるのに気づかなかったなあ」クラスメートの台詞にうなずく。夕暮れという時間と、レンガ造りのチャペルという小道具を使って、十一月が見せてくれた魔法――。