新井素子研究会 > 登場物リスト：書籍 > 読書中毒

読書中毒

ブックレシピ61

書誌情報

【文庫】

• ［著者］小林信彦
• ［出版社］文藝春秋（文春文庫）
• ［発行日］2000/05/10
• ［ISBN］4-16-725609-6
• ［PAGE］348
• ［価格］524円 + 税
• ［装幀］多田進
• ［装画］村上基浩
• ［解説］池上冬樹

新井素子関係の内容

エッセイ：「〈茜色の〉クロニクル」

• 【ページ】224-225
• 【備考】初出は『本の雑誌』。年月は不明。

小説『おしまいの日』への言及があります。

ポストモダン小説は終わったというが、そんなことはない、と学者が書いていた。どうでもよいことである。外国は知らず、日本では〈ポストモダン〉と銘打つ小説の大半はイモであり、クズである。ふつうのストーリーテリングができないので、〈見るからにポップ〉な外見で中味の空疎さをごまかす。三流芸人でさえ恥ずかしがる駄ジャレをならべて、これが〈ポストモダン〉ですという。これらがわからないのは、〈遅れている〉という恐るべきロジックである。

はっきりいって、読者はこんな本を相手にしない。翻訳ミステリを読む方がマシにきまっている。あるいは新井素子さんの『おしまいの日』を読む。（『おしまいの日』は「新潮」十一月号で吉本隆明氏が高く評価している。）

収録エッセイ

• はじめに
• 第一部　読書中毒
  • 1　〈小説をいかに語るか〉について
  • 2　オープニングと映画の技法
  • 3　人生はアクシデンタル
  • 4　フォーサイスにおける得意と不得意
  • 5　ハードボイルド的定石
  • 6　映画と小説のあいだ
  • 7　〈悪い〉たのしみ
  • 8　〈最新作〉としての『蓼食う虫』
  • 9　トマス・ハリス的パターン
  • 10　そこまで書く!?
  • 11　なにから読むか、バルザック
  • 12　J・M・ケインの不思議
  • 13　ミステリが〈わからない〉ということ
  • 14　日本文学の根本問題
  • 15　題名についての果てしない悩み
  • 16　永井荷風の「小説作法」
  • 17　〈短編小説〉について
  • 18　下町歩きと血縁
  • 19　フェミニズムと不倫
  • 20　『流れる』と〈文化の終り〉
  • 21　企業小説の変貌
  • 22　アメリカ版〈私小説〉への不満
  • 23　二つの監禁物語
  • 24　戦争と小説
  • 25　二人のチャタレイ夫人
  • 26　スピレインの過去
  • 27　英日疎開事情
  • 28　作者と作中人物の奇妙な関係
  • 29　毒が魅力のハイスミス
  • 30　プルーストをどう読むか
  • 31　〈あのころ〉をどう処理するか？
  • 32　またしても、ハイスミス
  • 33　エンタテインメントと脚色
  • 34　オリジナルなプロットを求めて
  • 35　『大菩薩峠』をめぐって
  • 36　大学には行ったら何を読むか？
  • 37　告白とフィクション
  • 38　長けりゃいいってものじゃない
  • 39　現代にもある〈小説の原点〉
  • 40　シムノンの語り口
  • 41　松本清張の語り口
  • 42　〈犯人がわからない〉批評家たち
  • 43　『失われた時を求めて』を読み通す法
  • 44　〈茜色の〉クロニクル
  • 45　〈一人称〉について
  • 46　たまには〈ハリウッド小説〉も
  • 47　『墨東綺譚』の独創
  • 48　とんでもない、『雪國』
  • 49　三島由紀夫論の勝手な読み方
  • 50　『鍵』の独創と危機
• 第二部　読書日和
  • 51　不幸な時代の読書とは
  • 52　女性必読の小説、アン・タイラーの『歳月の梯子』
  • 53　〈超〉読書法（夏休み版）
  • 54　プロたちの世界
  • 55　荷風と東京と女たち
  • 56　『蒲生邸事件』と『日本のアクション小説』
  • 57　冬休みにはなにを読むか
  • 58　ハイスミス翻訳のラストスパート
  • 59　なにはなくとも、ハイスミス
  • 60　〈最後の映画批評家〉による文化的事件
  • 61　笑いと死
• あとがき

「第一部」は『小説探検』（本の雑誌社／1993年10月）[amazon］を改題して収録。「第二部」は『週刊文春』1996年4月25日号〜1997年11月20日号に掲載されたもの。