４冊目は半村良の『闇の中の系図』。嘘つきの一族が活躍する異色の伝奇ＳＦである。
「旦那と一番揉めたのが、半村作品では何を選ぶかということでした。いくらでもほかに傑作があるのに、どうしてこれになるんだ、と。ただ、この作品には個人的な思い入れがすごくあるんです。
『闇の〜』は嘘をつかずにいられない人々の話なんですが、小説家ってそういうものだと思うんですよ。嘘をつきたいというのは、小説を書きたいという気持ちと同じなんです。プロの作家になる前は、ただ書きたくて小説を書いていたわけでしょう。そういう気持ちとシンクロする作品なんですね。旦那に言わせると、これは広告代理店の話だということになるんですけど……半村さんは広告代理店勤務経験のある小説家だったんですよ（笑）」