伊藤昭による書評コーナー。新井素子さんの『ひとめあなたに・・・・・』が表紙写真入りで大きく紹介されています。
などと言っているうちに、れれっ、もう紙数がない。最後の締めくくりは、ＳＦ大会で大人気だったというこの女性（ひと）にお願いしよう。
「ひとめあなたに……」新井素子（双葉社・650円）著者が今まで書いた長編のベスト・ワン。一皮剥けた傑作、ともち上げておきたい。オムニバス、という構成の弱さ、をあげつらう方もいようが、そんなことはどうでもいい。著者独特の”あったかいピンク”の雰囲気の中に隠されたどきりとするような人間省察（特に、第二エピソードの受験生少女が恐いよお）をこそ味わうべきなのである。そのコットン・キャンディは辛い。
他に紹介された本は次の通り。
作品リストは「ひでおと素子の愛の交換日記」一覧を参照のこと。
新井素子さんに関する投稿が2通掲載されています。P.184より。
★何を今更と言われるかもしれませんが、新井素子さんの本を初めて読みました。某文庫の、コバルト・シリーズの「あたしの中の…」。260円という安さにつられて買ったのですが、なんと、面白かったのですよ、これが。文体、そして、計算しつくされた見事な構成。のみならず、なんと、今の僕の年と同じ時に書かれたというからオドロキです。すっかりファンになってしまって友人の素子マニアに、いろいろご教授いただいている今日のこの頃です。ところで「愛の交換日記」は星雲賞コンビだったんですね。知らんかったあ。最後に「大きな壁の中と外」は名作だ！（※住所は略・谷口卓・17歳・高校生）
P.189より。
（前略）
11月号で目を引いたのは、何つうても素子さんの水着ピンナップ。あーいうの見せつけられると、ぜひ実物が見たくなる。三和銀行の素子さんとどっちが美人？ くれぐれも、男にトチ狂って道を踏み外さないようにね！（※住所は略・中瀬正也・20歳・学生）
「三和銀行の素子さん」というのは、1981年に発覚した三和銀行巨額横領事件の犯人である銀行員の名前です。当時大きな話題となりました。新井素子さんもこの事件について「名前を間違えられて困る」という内容のエッセイを書いておられます。→素研：『スコラ』1982年9月23日号