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本の雑誌　2011年1月号

No.331　塩むすび夜明け号

書誌情報

• ［発行］本の雑誌社
• ［発行日］2011/01/01
• ［発売日］2010/12/09
• ［雑誌コード］なし（書籍扱い）
• ［ISBNコード］978-4-86011-193-9
• ［PAGE］136
• ［価格］762円＋税
• ［表紙デザイン］和田誠
• ［表紙イラスト・本文カット］沢野ひとし
• ［特集］本の雑誌が選ぶ2010年度ベスト10

特集「2010年度ベスト10」

• 社内座談会実況中継
• 読者が選んだベスト1
• SFベスト10●『天冥の標 III』をフライングでベスト1だ！（鏡明）
• ミステリベスト10●テランと北方謙三がダントツである！（池上冬樹）
• 私のベスト3
  • 北村薫／岸本佐知子／坪内祐三／最相葉月／角幡唯介／深町眞理子／嵐山光三郎／若島正／都築響一／津野海太郎／クラフト・エヴィング商會（吉田浩美・吉田篤弘）／柿沼瑛子／紀田順一郎／田口俊樹／田中美穂（蟲文庫）／羽田詩津子／風間賢二／白石朗／黒田信一／亀和田武／かとうちあき／小森収／大久保寛／田口久美子／春日武彦

新井素子関係の内容

「2010年度SFベスト10●『天冥の標 III』をフライングでベスト1だ！」（P.16-19）

SF作家・評論家である鏡明が選ぶ毎年恒例のSFベスト10です。新井素子さんの『もいちどあなたにあいたいな』が第4位に選出されています。グレッグ・イーガン以後のSF的状況の中でこのような物語が新たに書かれたことと、その文体の持つ強い説得力を評価しています。

新井素子の八年ぶりの長編「もいちどあなたにあいたいな」は、グレッグ・イーガンの短編の一つを連想させるアイディアだが、それをはるかに超えている。読み終えて、びっくりする。こんな手があったのか！　いや、よく考えれば、相当に無理を重ねているのだが、それを感じさせないのは、新井素子という作家の力だ。殊にあの文体の説得力は、極めて強力だ。少女の物語ではなく、大人の女の物語であの文体がこれほど力を持つのか、もしかしたら、大人であってもその中には常に少女が存在しているのかもなぁ、というような埒もない感慨をもってしまった。

面白いと思ったのは、いくつかのＳＦが物語の中で、重要な役割を果たしていることで、ＳＦ作家はＳＦの良い読み手でもあることを感じさせてくれる。逆に言えば、あるアイディアを思いついても、過去の作品との類似書きになってしまうのではないかという気もする。そうした中で、このような新手を考え出すことができるというのは、すごいことだよな、素直に感心した。

鏡明による2010年度SFベスト10

1. 『天冥の標　III アウレーリア一統』小川一水（ハヤカワ文庫JA）
2. 『去年はいい年になるだろう』山本弘（PHP研究所）
3. 『NOVA2』大森望編（河出文庫）
4. 『もいちどあなたにあいたいな』新井素子（新潮社）
5. 『ファージング三部作』J・ウォルトン／茂木健訳（創元推理文庫）
6. 『ゾーイの物語』J・スコルジー／内田昌之訳（ハヤカワ文庫SF）
7. 『スワロウテイル人工少女販売処』籐真千歳（ハヤカワ文庫JA）
8. 『ハンターズ・ラン』G・R・R・マーティン他／酒井昭伸訳（ハヤカワ文庫SF）
9. 『世界時計と針の夢』諸口正巳（C☆NOVELSファンタジア）
10. 『エンドレス・ガーデン』片理誠（早川書房）