裏表紙の作品解説にはこのように書いてあります。
王冠を手にするのは誰？
教室は少女たちの戦場！
私立女子高中等部二年生の範子は、地味ながらも気の合う仲間と平和に過ごしていた。ところが、公開裁判の末にクラスのトップから陥落した滝沢さん（＝王妃）を迎え入れると、グループの調和は崩壊！ 範子たちは穏やかな日常を取り戻すために、ある計画を企てるが……。傷つきやすくてわがままで――みんながプリンセスだった時代を鮮烈に描き出すガールズ小説！
本文中に新井素子さんの名前が登場しています。単行本：P.14、文庫：P.15より。
「ほら、リンダさん。その本、貸し出し期間過ぎてるんじゃない？」
チヨジはスーさんと範子に軽く目配せすると、世話好きらしくリンダさんの前に置かれた新井素子の文庫本を指し示す。チヨジの猛プッシュにより借りたはいいけれど、活字嫌いのリンダさんは少しも読み進んでいないようだ。
「新井素子」には「あらいもとこ」とふりがながあります。主人公の親友である「チヨジ」は、新聞社勤務の父親があらゆるカルチャーに精通しており、その影響もあってか昭和の頃の小説や映画やアニメが好きな女の子です。新井素子さんの本を猛プッシュするとはいい趣味です。この文庫本のタイトルは果たして何だったのでしょうか。
余談ですが、著者の柚木麻子氏は「ばか」を「莫迦」と表記します。単行本版P.67／文庫版P.77-78から抜き出してみます。
そこまで考えて、範子は動揺してしまう。自分がもはや王妃をはっきりと見下し、莫迦にしていることを、やっと自覚したのだ。
文庫版に収録された大矢博子氏（書評家）による解説でも、小説の内容に触れる形で新井素子さんの名前が登場します。文庫版P.249より。
もうひとつは、登場する女の子たちのリアリティだ。皆とてもリアルで、いろんなタイプの子たちそれぞれに「ああ、こういう子、いたわあ」と思ってしまう。昭和の映画が好きとか、新井素子を読んでいるとか、資生堂のクッキー缶にキレイな小物を入れているとか、そういう小道具の使い方が実に巧い。