父はハインラインが大好きだったのね。で、あたしがSFマガジンなどぱらぱらやってたのを見て非常に喜び、きわめて強力にすすめる訳。ハインラインは面白いよ。読んでごらん。で――割と素直にあたしは、”人形使い”を読んでみることにする。これが……致命的だったのよ！
あたし……ナメクジ、嫌い！だあいっきらあい。あののたくる様子、嫌い。塩かけると溶ける処嫌い。
（中略）
ところで、ハインラインの”人形使い”には、出てくるのですよ、巨大ナメクジが！ 人間の背中に貼りついて。
悪夢の経験よ。いったん読み出しちゃった以上、ナメクジが退治されるまで読みやめる訳にはいかず、夜は夢にナメクジが登場、昼は背中むずむずして。以来あたしは、SFをおびえるようになってしまった。
なめくじ、だいっきらい。あのぬるぬるしたとこ、嫌い。塩かけると溶けるとこ、きらい。通った跡にぬめぬめ光るあとがつくの、嫌い。えーい、ナ×××という単語を書くのさえけがらわしい。あたしはこういう信念持ってて、故に、今まで、××××（わっ全部伏せ字にすると、何かいかがわしいわね）がでてくる小説は、全部悪書としていたのだ。ハインラインの「人形使い」なんて、一大悪書だもんね。