『11人いる！』を最初に読んだのは、私がまだ中学生だった時だと思う。そのちょっと前、萩尾さんの『ポーの一族』に感動して少女まんがを読むようになった私、『きゃあ、今度はもろにSF』っつって喜んで、むさぼるようにして読んだものだった。
（中略）
なお、私は作中にでてくるヴェネって星の名前が好きで、実は、私のデビュー作にでてくる宇宙人は、ヴェネ星人だったりするのだ。
「デビュー作」とはもちろん「あたしの中の……」のことである。文庫版のP.54に「ヴェネ」が登場している。
「あたしとエクーディはヴェネって星の住民なの」
ルナはしぶしぶ話しだす。どうやらエクーディっていうのは、あたしの本名らしい。
「ヴェネは銀河系のほぼ中央部にあって、わりとこの地球とかいう星に環境が似てるの。ただ、こんな星よりずっときれいで健康な惑星だけれど。で、あたしとエクーディとその他十人のスタッフは、銀河系全体の地図を作るためにこんないなかへやってきたの」
――半村良さんの『となりの宇宙人』では宇宙人をチュウさんと呼んでたけど。
素子 ま、わたしのキャラクターは、宇宙人の固有名詞が出てきたあとでも「宇宙人さん」って呼んでるんだけどね。これ、一人のうちはいいんだけど、複数の宇宙人が出てくる特別がつかなくなるし、『あたしの中の……』のときはエクーディって宇宙人とヴェネって星の名前と二つしか出てこなかったからまだよかったんだけど――ちなみにこのヴェネは萩尾望都さんの名作『11人いる！』のフロルの生まれ故郷の星の名前ですね。（注2）
注2 『あたしの中の……』は、新人賞の応募作で、書いた当時、まさかこれが活字になるとは夢にも思わなかったもので、つい、印象に残っていた名前を使ってしまいました。萩尾さん、すみません。
あ、しまった。そうとばかりも、言えないんだ。『大きな壁の中と外』にも、かなり、漫画の中、小説の中からお借りしてしまった名前がある……。