――ところで夢と文学といえば、泉鏡花の作品がお好きだとか。
新井 いちばん最初に読んだのが「外科室」っていうんですけど、最初にあれ読んだ瞬間、なんてきれいなんだろうと思ったんですよね。
――どういうところが？
新井 ありありと情景が分かったような……というと変な言い方だなあ、主人公の女の人の、ものすごく強い意志に打たれたってわけでもないし……何て言ったらいいんだろう。それまでいわゆる文芸作品というのは全然読んだことがなかったんですよね。そう考えると、なんか極端な飛び方だって気もしますけど（笑）。
――お読みになったのはいつ頃ですか？
新井 中学校のときです。それまでミステリー専門で、エラリー・クイーンとかクリスティーとか、そういうのばっかし読んでたんで、ミステリー以外の小説読むの、ほんと久しぶりで、久しぶりに読んだのが泉鏡花の「外科室」だったりすると、そのまま人生狂いそうな気もするんだが（笑）。で、鏡花の次にこどへいったかというと、トーマス・マンへいったんですよね。人生がほとんど分からないな、こうなると（笑）。